外で絵を描いている時、声をかけられることはめったにない。僕は自分だけの世界に入っていて、その時間を心地よく過ごしているのだが、たま〜に人が僕の描いている絵を見ていることがある。あるいは絵とは関係なく、何の理由もなく、僕がそこにいるというだけでからかわれることもあった。
今日、メタセコイアの木をスケッチしていたら、珍しく背後から人が声をかけてきた。「あらー、細かいわねえ。すごいわねえ」と言う。僕より年配の女性だった(と推測する)。絵を描く人かどうなのか「鉛筆で描いていらっしゃるの?」と尋ねるので、「いえ、製図用ペンです」と答え、使っているペンを見せた。「太陽の光に透けた葉っぱがきれいだなと思って描いているんですよ」と解説すると「そうねえ、きれいよねえ」と、その人は木の方に目をやった。
僕はその場所でスケッチをしていることで、ある日の午後の何気ない、でも美しく輝くメタセコイアの葉をその人に紹介することができた。
午後の光の中で