発想の転換は大事だ。コロナが広まって、みんなマスクをするようになったので、街へ出ても最初のころ僕は、スケッチをする楽しみや意義が減ったと思っていた。
しかししばらくして、いや、それはそれで見るべきもの、描くべきものはあると、考え方を変えて描くようになった。
そして今日、電車に乗ったとき、ふと気づいたのだ。手を描けばいいじゃないか。今は誰もがスマホをいじっているから、僕たちはしょっちゅう手を見ているのだ。そう気がついて、今日は電車内で近くにいる人の手をスケッチした。いつものように、とにかく線を引く。失敗したら、ためらわずもう1本線を引く。
手はどういうポーズであれ描きづらい。人物画を描いている人が本の中で言っている。画面から肘などが切れるのはいいが、手の先が切れてはいけない。手は描きにくい部分だし、逆に言えば、手を見れば画家の力量が分かると。僕もそれはよく分かる。どうしても逃げようとする。だから、着彩やモノクロにかかわらず、できるだけ手を画面に入れてちゃんと描くようにしている。